アリババのJack Ma氏がTel Aviv大学で名誉博士号を取得
2018年5月3日、ソフトバンク時代に長く担当していたアリババのJack Ma会長が、Tel Aviv大学で名誉博士号を授与。授与式でMa氏のスピーチを聞いた時、2009年に同社の創業10周年のイベントに招かれ、杭州市(上海から新幹線で1時間弱)に行った時の記憶が蘇った。
それは人を大切にする、Ma氏の経営スタイルだ。
以下の写真を見ていただきたい。10周年のイベントで自らビジュアル系ロックバンドを披露し、場を和ませた時のものだ。同イベントは、町中を巻き込み、社員と経営陣みんなが作り上げた、とても手作り感溢れる温かいものだった。
2009年との違いは、会社が世界トップ10に成長したこと。Ma氏が同大学で生徒に向けて話した中で印象的だったのは、”$1M、$10Mくらいの資産の場合、自分のことが優先されるが、$100M、$1Bの資産を持ったらお金は自分のものではなくなる”ということだ。例えば、北京大学や清華大学の生徒は優秀かもしれない、その優秀な人たちをアリババで採用するのではなく、中小企業で採用してもらった方が社会全体の底上げになる。やはり偉大な起業家は何か違う。
そんなMa氏が、なぜイスラエルで名誉博士号を受け取ったんだろうか?授与履歴を調べたところこれまで、中国、香港、台湾、フィリピンで取得。アジア外では今回が初!
アリババは昨年$15Bをかけて世界5カ国でリサーチラボを設立することを発表していた。イスラエルはその中の一つ。授与式のスピーチで、イスラエルへの期待を強く語った。また、”イスラエルは来る前に思っていた印象と違い、平和で、経済が豊かで、素晴らしいイノベーションに溢れている。本で読むのではなく、ぜひ来て、見て、触れるべきだ”とも語った。
<Ma氏の言葉>
- Never give up
- 人々のグチを解決することが機会
- IT(インターネット)の世界から、DT(データ)の世界に移り変わる
ITはcontrol you mind、make you stronger
DTはcreate a mind、make others stronger - 成功したければIQとEQが必要だが、尊敬されたければLQ(Love Quotient)を持て
- 未来の経済は、シェアリング、透明性、責任
<Ma氏の授与式のスピーチ>
イスラエルでデモに参加した
日本で生まれ育った私にとって、
最近では、ネタニヤフ首相の汚職への抗議デモ、そして先日2/
政府方針:
- イスラエルにいるアフリカからの亡命希望者---3.8万人(
人口の約0.5%、独裁体制下のエリトリアから7割、 強権政治が続くスーダンから2割) - 今年1月の閣議で、
うち約2万人の独身男性を3月末までに国外退去させる方針を固め る - 退去する場合---航空運賃と3,500ドルを支給
退去しない場合---イスラエル国内で無期限拘置 - 退去先はウガンダとルワンダとされる(
生命の危険がある出身国には戻せないため)
なぜアフリカからの亡命者がイスラエルに?:
- イスラエルがアフリカ大陸との玄関口に位置するため
- 2000年以降特に、
情勢不安から逃れたアフリカ人がイスラエルに移民 - 問題視した政府が、
2013年までにエジプトとの国境沿いに壁を設立 - 今回の対象の亡命者は壁以前に侵入した人たち
<2万人の人が集まったデモの様子>
デモに参加した人たちの思い:
私はデモに参加して、集まった人たちの思いを知った。
イスラエル人の多くは、第二次世界大戦中に起きたホロコーストの生存者またはその子孫だ。その人たちは、イスラエルが建国される前のパレスチナの土地に難民として命からがらやってきた。
紀元前に遡ると、ユダヤ人はエジプトで奴隷として生きていた時代もある。その背景から、聖書の申名記には以下記載がある。イスラエルはさまざまな色がついた国だが、こうして隣人を愛し、守ろうとする人が多くいるのも事実だ。
申命記 第10章
あなたがたは寄留の他国人を愛しなさい。
あなたがたもエジプトの国で寄留の他国人であった。
カザフスタンへ出張
先週、イスラエルの会社とカザフスタンの首都アスタナにサービスの紹介に行ってきました。
イスラエルからトルコのイスタンンブールにまず2時間、そこからアスタナに5時間と、乗り継ぎも含めると1日がかりの移動。そして、+20度のイスラエルから、一気に-20度の世界に... 40度の気温差はなかなかの経験です。
(カザフスタン:人口18百万人、天然資源の埋蔵量世界6位、1991年ソ連から独立、独立以降ナザルバエフ大統領が強力なリーダーシップを発揮)
日本人にとってカザフスタンはどんなイメージですか?
戦後の抑留者(約6万人)、ソ連の核実験場(セミパラチンスク)、寒い、でかい(世界9位)...
イスラエルにとって、約25%の原油輸入国であり、イスラム系国家(*)で唯一の安全保障協力国でもある。90年代以降、カザフスタンは常に周辺国からのテロリスクを抱えてきており、イスラエルとの関係構築は、対テロ対策において重要との判断であった。
*イスラム教は国教ではないが、人口の7割(スンニ派)を占める。
実はカザフスタンは、ヨーロッパ、ロシア、中東、アジアを結ぶちょうど中間に位置し、近年、地政学的に重要な拠点となりつつある。昨年、何度か開かれた”シリア和平会議”の会場としても使われた。宗教や政治的軋轢が低いため、ヨッロッパ人、アラブ人、アフリカ人、アメリカ人、アジア人など、世界中の人にとって集まりやすい場となっている。
2018年1月には、Astana International Financial Centreが設立され、中央アジアの金融都市を目指して、昨年は国際万博が開催された。国営事業の民営化や、株式市場の設立も進んでおり、今年7月には金融都市としての新たな幕開けを迎えるそうだ。
アスタナに行くと、ドバイのような雰囲気を感じる。ショッピングモールの一角にはスキー場の代わりに、砂のビーチがあり、極寒のこの土地で一年中泳ぐことができる。違和感があるが、今後注目の国かもしれない。。。
ユダヤのお正月、実は日本の習慣と似ている
お正月はどのようにお過ごしでしたか?
イスラエルでは1月1日は平日で、いつも通り仕事や学校に行くんですよ。
今日は日本のお正月にちなんで、ユダヤ教のお正月の風習についてご紹介します。
中国や韓国が旧正月を盛大に祝うように、イスラエルのユダヤ人もユダヤ歴のお正月を祝います。2017年は9月20日〜22日、2018年は9月9日〜11日、2019年は9月29日〜10月1日と、毎年日にちが変わります。
今年はなんと2018年ではなく、5778年!
ユダヤ歴で、神が世界を創生した日から数えられている。
挨拶は、
シャナー・トバー(שנה טובה)
=あけましておめでとうございます
実は日本と似た習慣がある。
- 除夜の鐘
ラビがシナゴーグで日没にお正月を知らせるラッパを吹く。これはショーファールといって、通常羊の角で作られた角笛である。
- 年賀状
日本のように干支にちなんだデザインではなく、新年が甘く良い年になるようにりんごと蜂蜜が描かれたものが一般的。 - おせち料理
日本のようにお重に入った立派なお料理ではないが、並べられた食材の意味は日本のものに極めて近い。
-幸せ:蜂蜜をつけたりんご(日本ではれんこんや昆布巻き、栗きんとん)
-子孫繁栄:ざくろ(日本では数の子や里芋、くわい)
-出世:尾頭付きの魚(日本では出世魚のぶり)
ちなみに携帯でユダヤ歴の表示が可能なので、表示しても面白いかもしれません。私はイスラエル人と話す時に、5778年の歴史を誇るユダヤ人の習慣や生き方があることを常に思い起こすために表示させています。
2017年、世界を変えたイスラエルの"Superhero"9社
今日で2017年も終了。2月にイスラエルに引っ越してから、たくさんの会社を訪問させていただきました。
イスラエルで有名なニュースサイト”NoCamels”に、今年世界を変えた9つの会社が発表されていたのでご紹介します。私も何社か訪問させていただきましたが、どれも魅力的な会社です。
- Zebra Medical Vision
2014年設立。AIをもちいた医療診断の技術を開発。
何千もの病気の診断を受けたスキャンを解析し、病気の兆候を見つけると同時にいち早い診断が可能になる。既に乳がん、脊椎骨折、骨粗鬆症、脂肪肝、動脈瘤、脳溢血で利用可能とのこと。
現在スキャン毎に$1で病院や医療関係者が利用可能。既にGoogle Cloudとの提携も決まっている。
創業者は、手頃な価格で、誰でも画像技術が活用できるようにしたいと。
- OrCam
エルサレムの会社。視覚障害がある人に最適なツール。
MyEye2.0というメガネに引っ掛ける手軽なデバイスで、手のしぐさやタイプされた文字(新聞、本、レストランメニュー、サイン、商品ラベル、PCやスマホのスクリーン)を読むことや、リアルタイム顔認証が可能。読み込んだ顔の中から、重要な人たちを見極め、音声記録も可能。
創業者はなんと、今年$15BでIntelに売却されたMobileyeのAmon Shashua氏とZiv Aviram氏。 - Sesame Enable
2012年設立。初のハンドフリースマホの技術。
こちらも障害がある方に便利。頭の動きと音声でスマホが利用できるもの。
創業者は事故で四肢まひになったGiora Livne氏。 - Vayyar Imaging
先日ソフトバンクが 業務提携を発表した会社。
電波を利用して、物質や水の中にあるものさえも3D画像解析が可能な技術。
肌や細胞組織の中にあるがん細胞さえも解析可能。医療以外にも、自動運転、建築、農業、スマートホーム、ロボットにも活用されていると。 - Impact Labs
WeWorkとのコラボで“hardware innovation center” を開設。起業家、企業、社会的イノベーターの活動を支援。特に障害者や高齢者等、生活に不自由がある人をターゲットとしたプロジェクトをサポート。 - Team8
2012年設立。スタートアップビルダー。
革新的なサイバーセキュリティ技術を世に送り出すスタートアップの育成や設立を目的としている。
Microsoft、Cisco、Eric Schmidt 氏の Innovation Endeavors、 シンガポールの Temasek Holdingsや三井物産等、名だたる投資家がずらりと。
8200部隊のトップ1%の卒業生をいち早く見つけ出し、起業を支援。 - Argus Cyber Security
2012年設立。侵入検出システム(Intrusion Prevention Systems (IPS)) で有名。ドイツの自動車部品メーカーのContinental社に今年$400Mで買収されたばかり。
将来、自動運転や高度なコンピューターを搭載した車両が増える中、サイバーセキュリティが鍵。
設立理念は、”道路を走るすべての車両をサイバー攻撃の脅威から守ること”だと。 - Innoviz Techonologies
自動運転システムで欠かせないのが、カメラ又はセンサー。Intelに買収されたMobileye社はコスト安の単眼カメラで開発を進める中、多くの競合はLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)を使用。
その中でも3Dリモートセンサーで周辺を3Dマッピングできるのが同社。
今年、Bラウンドで、GM系のDelphi Automotiveとフォード系のMagna Internationalから資金調達をしたことで、競合他社より一歩前に出た。 - Institute Robotics
2017年はAIスピーカーの市場が一気に盛り上がった。
同社が開発するのは特に一人暮らしの高齢者向けの小さなロボット。
日本の会社の人にも紹介したことがあるが、高齢化が進む日本にはぴったり。2015年に設立した同社は、今年$20Mを調達。Toyota AI Venturesも投資に参加。
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身近なイスラエル!この5つ、知ってますよね?
12月は日本からのお客さんが多く、ブログがご無沙汰になってしまいました。
お越しいただく方々に合わせて会社、人、私が好きな場所を紹介したりと、私自身のイスラエルでの知見とネットワークを広げるありがたい機会です。
12月23日(土)はナザレ(イエスが育った町)にお客さんを連れて行きました。イエスの誕生日直前の週末とあって、パレードで盛り上がっており、キリスト教とイスラエルの共存を肌で感じる機会でした。
今日は、”身近なイスラエル”について書きたいと思います。
身近???
イスラエルがパレスチナと緊張状態にあることは、今回トランプ大統領による首都問題でも明るみになりました。日本にいると、こういった紛争を伝えるニュースを目にすることが多く、危険な国の印象をもたれがちなので、今日はイスラエルが身近になるようなネタを!
1. 女子が好きなお店
- チョコレートが楽しめるカフェで有名な、Max Brenner
@東京ソラマチ、ルクア大阪、イクスピアリ千葉、ラフォーレ原宿、名古屋ラシック
- SABONより少しお手頃なボディケアブランド、LALINE
2. 錦鯉の養殖
日本の文化だと思いきや、実はイスラエルの輸出量がこの20年で急増。特に欧州への輸出の4割がイスラエル産。
イスラエルではもともと鯉を食べる文化があり、養殖していたら突然変異で色がある魚が生まれたのがきっかけに輸出が始まったとか。
イスラエルは、土地の3分の2が砂漠のため、水資源が足りない。8割の水を再利用するだけでなく、海水の淡水化で5割以上まかなっている。そんな水不足の国なのに、水道水が普通に飲める。鯉の養殖に欠かせない綺麗な水も十分まかなえているということ!
3. フォークダンス”マイムマイム”
日本で小さい時にみんな踊ったことがあるこのフォークダンスは、実はイスラエルの民謡。
マイム=ヘブライ語で水
開拓地で水を掘り当てて人々が喜ぶさまを歌った曲。
こちら参考までに:
4. USBの開発
1999年にM-Systemsというイスラエルの会社が開発し、その後2000年にIBMがその会社を買収。
5. SodaStreamの開発
SodaStreamという炭酸水を作る機械を作っているのも2010年にNASDAQ上場したイスラエルの会社。健康な飲み物を開発したいと、ソーダ水に着目したらしい。確かにコーラやレモネードよりもうんと健康的。
私はこれなしでは生きられない〜
以上。
世界的企業のイスラエルへの入り方
12/6(水)に米国がエルサレムをイスラエルの首都と承認してから数日が経った。危険視されていた12/8(金)のイスラム教徒の集団礼拝(金曜礼拝)もそれほどの混乱なく乗り越えて一安心。私が住むTel Avivはいつもどおり人々が公園やレストランに行って、週末を楽しんでいる。日本から心配して連絡くださった家族や友人がたくさんいましたが、変わらず平和にやっています!このニュースで、イスラエル出張をキャンセルする方がいないことを願っています。
今日は世界的企業のイスラエル進出のパターンについて書きたい。
イスラエルは人口8.5百万人と非常に小さく、そのためイノベーションを起こせる優秀な人材も無限ではない。また兵役を通じて、人と人との関わり合いが強いため、紹介で社会が成り立っている。本当に良い会社を見つけたら、その中にいる人とどう長く付き合うかを考えるのが、イスラエルに入る重要な鍵だ。
2013年、Googleは交通情報をユーザー間でシェアできる技術を開発したWazeをUS$1.3Bで買収。その後、Wazeは交通情報に限らず、Googleのコア技術を開発するR&Dとして成長。同じく、Facebookも2013年に、データ管理アプリを開発するOnavoを約US$200Mで買収し、今ではイスラエルのR&D拠点として開発の幅を広げている。
最近、中国のアリババが、初めてイスラエル企業を買収することが発表された。同社はこれまで多くのイスラエル企業に投資をしてきたが、買収は初。選ばれたのはVisualeadという画期的なQRコードを作る会社。2012年設立、2015年にアリババから出資を受けた40人程度の会社だ。
今年10月、アリババはUS$15Bを投じて”Alibaba DAMO Academy”という巨大R&Dプログラムを立ち上げることを発表。データインテリジェンスのほか、Internet of Things(IoT)、フィンテック、量子コンピューティング、ヒューマン・マシンインタラクションなど破壊的技術開発に特化するとのこと。最初の拠点は、中国(北京や杭州)以外に、アメリカ、ロシア、イスラエル、シンガポール。Visualeadはイスラエルの基地的な役割を果たすと言われている。
日系企業にとっても、イスラエルへの入り方の良い事例になりそうだ。
Visualeadが作る世界: